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第35回1000字小説バトル Entry3

明日はどっちだろうね


程よく混み合った電車の中
とにかく座りたかった私は空いている所へ腰をおろした。
次々に乗り込む人。
知らない人と隣り合わせで座っている。不気味だ。

視線を落すと、向かい合わせになる人の足が見えた。
私の前はスニーカーにジーパンをはいた若い男の人だった。
その隣には、少しよそ行きな感じのサンダルにストッキング、その足の
肉付きから生活の様子が見て取れる。4、50代であろう、おばさんだ。
こんな共通点のなさそうな2人が、会話をはじめたのだ。

「あれ、お勤め先は」
「あのねぇ、○○ブランド」
「あぁ○○ブランドって結構売れてますよね」
「そうだよねぇ、結構ね。」
「働いてる人多いんですか? 」
「んー…でも最近は中国のほうに力入れてるみたいよ、会社は。」
「はぁーそうですよね」

男の人は敬語を使っている。親子ならありえない会話だ。
この人達は一体どんな関係なのだろう。

そんな事を考えているうちに、私は下車しなくてはならなかった。
電車通学はほんのつかの間である。
私は下車し、改札を抜けた。



こんな何でもない事をとっくに忘れていた頃、父からメールが来た。
『今日は話したいことがあるから早く帰りなさい』
父がこんなメールを送ってくるなんて変だなーと思いつつ帰宅した。

「ただいまー」
「あっ」
父が出てくる。
「お帰り」
私は階段を上がろうとした。
「ちょっと! ちょっと待って話がある!」
「でも着替え」
「いいから!リビングに来て」
やはり変である。そしてリビングに入った私は驚いた。

「あのー、どちら様?」
「紹介するよ、緒方のり子さん、岸田洋亮くんだ」

この時、あの電車の中での不思議な関係を思い出した。
このジーパン姿と足の肉付きは間違いない。
「何で私に紹介すんの?」
「それは…」
「それはですね、あなたをお守りするためです」
「えーと緒方さん、それはどうして?」
「私○○ブランドの商品管理課長でございましてね」
「岸田さんは?」
「あっ、俺は課長の友達で…」
友達!?
「てゆうか何?何なの○○ブランドって、何、セールス?」
「あ、あのな…」
「この際はっきり申し上げますと…」
緒方さんが額をハンカチで抑えた。父は目を閉じた。

「私共の会社は、人間ブランドです」

「は!!?」
「つまり彼らは人間を商品としてるんだよ。」
「すまん!!父さんはお前を売ったんだ!!」
父が土下座をしていた。
言葉も出ずに捕獲されてしまった。


緒方さんの車の中
「私さ、電車ん中で2人に会ったことあるよね」

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