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第35回1000字小説バトル Entry33

その先

昨日彼からプロポーズされた。
それは私にとって予想もしていないことだった。

「結婚しよう」

その一言で0コンマ数秒、私の時間は止まったんだ。

彼と知り合ったのは11年前。
運命的な出会いとはほど遠く、ただ中学の同級生で、1番仲の良い男友達のポジションに彼がいたわけである。
その頃から彼氏彼女の関係だったとはとんでもない。
高校、短大時代は別々になり会う事もなくなった。
それが3年前の同窓会で再会し、中学の時の名残で友情を再スタートさせたのだが、いつの間にか友達が彼氏に変わっていた。
正直お互い恋愛に疲れていた時期、傷の舐め合いのような感じで始まったからドキドキとは違う。
「楽」という言葉ががぴったりの2人なのだ。

しかし私たちは割り切っていた。
お互い他に好きな人ができたら別れる。
つまり「つなぎ」なのだ。
それが2人共、想い人はそう簡単には現れず、ずるずるとここまで来たわけである。
そんな私たちの間に「結婚」って言葉は存在していない、はずだった。
少なくとも私はそう思っていた。
だから彼のプロポーズは、まるでいきなり後ろからプールに突き落とされたような衝撃だった。

その場で断ることだってできた。
でもそうしなかった。
理由は1つ。
私の頭に「楽」の一文字がちらついたから。

もう23だし、そろそろ身を固めるのも悪くない。
この先誰も現れなかったら行き遅れになるのが落ちだ。
でも結婚ってなんだろう。
好きな人と一緒いたいから結婚する。
親友のキクちゃんはそうだった。
でも好きって気持ちだけでこの先やっていけるなんて、そんな甘いものじゃないような気がする。
だったら楽な方がいい。
しかし今度はそれで幸せなのかという疑問に直面する。
そんなわけで、今私は脳みそが破裂するのではないかというほど悩んでいるのだ。

彼のことは好きだ。
頑固だけど正直だし、文句は言うけど話は聞いてくれるし、自分勝手なところもあるけど気は利くし、たまに喧嘩もするけど仲直りも早い。
そう考えると私にとってのデ・メリットは少ない。

でも私の求める幸せってなんだろう。
出た答えは「ぬくもり」、かもしれない。
彼といる時、私はそれを感じてるのだろうか。
わからない。
考えたことなかった。

だったら確かめればいい。
返事はその後だって遅くはないはず。

お気に入りのグレーのカーディガンを羽織って、家を飛び出した。
彼のアパートまで、私たちの「ぬくもり」を確かめに。

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