第35回1000字小説バトル Entry38
「――と、以上の様な計画で建設されます」
施行責任者は締め括った。
「冗談じゃない、そんな杜撰な計画で建てられちゃたまらないよ!」
「そうだそうだ、我々の意見をカケラも採り入れてないじゃないか!」
「大体、住宅地のど真ん中じゃないか!」
反対派の住人たちの声が次々に上がり始めた。
「しかし、これは必要な施設であって、用途と利便性を鑑みた結果で」
市の担当者が及び腰で説明をしようとする。
「何でそれを我々の近所に建てなければならないか、だ」
「そのために相応の補償金を……」
市長は黙って成り行きを見守っている。
「こんな補償金では納得出来ないぞ!」
「引越全て面倒を見ろ!」
「そうだ、市有地と市街化調整区域を明け渡せ!」
「家を建てる時はうちの工務店に!」
説明会場は、質問とも怒声ともヤジとも付かない声で満たされる。
反対派の住人たちは、今にも掴み掛かりそうな勢いだった。
市側の警備員たちの顔に緊張が走る。
その時。
「皆さんお静かに。話し合いは紳士的に行きましょう」
立ち上がったのは、反対派の雇った弁護士だった。
「――市にも施行業者の方々にも、我々の感情は理解して頂けたと思います」
弁護士の声が部屋に響く。
「過去のデータを鑑みても、施設から出る廃棄物、騒音問題は解決されてはおらず、周囲の道路の渋滞を引き起こし、治安の悪化も深刻です」
「そうだそうだ!」
「市は住人の安全を守ってくれるのか!」
「し、しかし、あなた方も利用するわけで、長い目で見れば……」
市長は既に及び腰だった。
「長い目で見ればこそだ!」
「外部の受け入れもあるそうじゃないか!」
「うちは使わん!」
「なければないで、自分たちでどうにかする!」
ヤジが収まってから、弁護士は再び口を開いた。
「これが住人の皆さんの偽らざる心境です。この建設工事が、いかに地域を無視した強引な施策であるかを理解して頂きたい」
口ごもる施行業者、市長や担当者を見据えながら、弁護士は言い切った。
「……ざけんな」
市長が口を開いた。
「は? 何か仰いましたか?」
弁護士の顔に僅かに笑みが浮かぶ。
「ふざけるな! お前ら自分の事以外は考えられないのか!」
市長が怒鳴った。
「治安も悪くなるかも知れん。だが、受け入れるべきじゃないのか!? 別に原発や産廃処理場ってんじゃない!」
弁護士は勝ち誇った笑みを浮かべ、役人たちは絶望的な顔で天井を仰いだ。
「学校ぐらい建てさせろよ!」