第35回1000字小説バトル Entry42
グミキャンディー
グミキャンディーご存じ?
グミのこと知ってれば、グミみたいとか言えるけど、残念なことにグミを知らない。
グミキャンディーは小さくまん丸くってオレンジ色だったり、ブドウに似せて濃い紫色だったり、
ミカンの房の形だったりする。
カムとプヨヨンと歯ごたえがある固めのゼリー菓子だ。
プヨン、プギュ、プヨン、プギュとさんざんあま噛みしてから最後とどめに、歯茎に力を込めて
グギィと噛み切る。
グジャ、グジャ細かく噛み砕き、やっと飲み込む。
ああ、食べるってセクシー。
今日賢の先生から電話があった。
「賢ちゃんが隆君と喧嘩して、頭を囓られました。」
と言う。
頭をどう囓ったのか、想像するだけでおかしい。
頭だと肉が薄いから噛み心地良くなかったに違いない。
お気の毒。
「ねぇ、先生、グミキャンディー知ってる?」
「えっ?」
「噛むとプニュ、プニュして気持ちいい、ちょうど子供噛んだみたい。」
「アッハハハハハ、渡辺さんまたそんなこと言って。」
それで電話は終わったんだけど、ジュワァーと昔の記憶があぶりだしのように浮かび
上がってきた。
私はよく子供を噛んだ。
憎たらしい時ガブッと、可愛くてもカポッと。
大きく開けた口一杯にまん丸い腕や尻を頬張って、ゆっくり歯に力を入れる。
子供の肉が歯や歯茎にやわやわと弾力を返す。
もうこれ以上噛んじゃだめと、もっと噛みたいの瀬戸際の攻防。
自省と衝動の目もくらむような二律背反は、私を混乱させ、くらくらさせる。
それでついつい力が入ってしまい、ギャーという鳴き声で我に返る。
母屋の風呂に入りに行く。
姑が「何これ」
娘「おかあさんが、噛んだ。」
私「ヘェーッ」
私はノミみたいに背を丸めて一目散に外に飛び出す。
グミキャンディーなんぞ噛んで喜んでいる今は、なかなか平和でよろしい。
終わり
読んでくれてありがと