第35回1000字小説バトル Entry43
今日はお父さんの誕生日。
いつもの感謝に六歳になったばかりのケイちゃんは、パパに晩御飯を作ってあげることしました。
「ケイちゃん、手伝おうか?」
「はいってこないで!」
心配で台所を覗きにきたママを追い返して、ケイちゃんは椅子に登ってテーブルの上に並ぶ材料を眺める。
玉葱、ニンジン、ジャガイモ、お肉、カレーのルー(甘口)
すべてママが用意したものです。
「ああ……包丁をそんな風にもっちゃ……」
ケイちゃんには秘密で仕掛けたカメラの映像を別室で見ているお母さんは、すごく不安そうです。
しかし、そんなお母さんの不安をよそに、どんどん材料を切っていくケイちゃん。
見た目は不恰好だけどなんとか無事に野菜を切り終えて、次は食材を火に通す番です。
椅子を移動させてコンロの前へ。
けれど、フライパンが見当たりません。
いつもママは使い終わったフライパンをどこに置くのかな?
「ほら、コンロのした。いつもそこから出してるでしょ」
お母さんの言葉が届いたのか、ケイちゃんは椅子をどかせて戸を開ける。
「あ、あった」
嬉しそうに呟いて、ケイちゃんは銀色のフライパンを取り出し……あれ、すこし違うぞ。
けれどケイちゃんは軽いそれが気にいったのか、コンロに乗せて火をつける。
「あ……あれ……ポップコーンの……」
すぽぽぽぽぽんすぽぽぽぽんすぽぽんぽん!
軽快な音を鳴らせて一気に膨らむポップコーン。
「わあ……びっくりした……」
とりあえずポップコーンをテーブルに置き、別のフライパンを取り出し調理を始めるケイちゃん。
「パパ、お誕生日おめでとう!」
帰ってきたパパに飛びつくケイちゃん。
「あ、うん。ありがと」
ケイちゃんを抱きかかえてリビングへと入ってくるお父さん。
テーブルに並べられた料理に驚きます。
「これ、全部ケイちゃんが作ったのよ」
「へえ、そうなんだ」
「えへへ」
頭を撫でられ、嬉しそうに目を細めるケイちゃん。
今日の晩御飯はカレーにサラダ、特別にもう一品。ポップコーン。
見た目は決して綺麗とは言えないけど、味の方は抜群。なんと言っても愛情の量が違います。
「うん、おいしいよ。ケイちゃん……っとと」
ケイちゃんを見るお父さんの笑顔が、一層やわらかくなります。
料理を頑張ったケイちゃんは、寝ちゃってます。
「おつかれさま」
天使の寝顔の愛娘に、パパとママ幸せそうです。
お疲れ様、ケイちゃん。ゆっくりとやすんでね。