第35回1000字小説バトル Entry47
朝? 私は浅い眠りから醒めた。
昨夜遅くまで筆を滑らせたキャンバスの横で、時計が朝を示している。
肌に潤いが少なくなったと感じながら、眠い目をこすり洗面所に向った。歯を磨きながら明るい窓の外を想像して休日の過し方を考えた。
(買い物?映画?こんな陽和は、やっぱ芝生でしょ)
そう決めるとバタバタと身支度を済ませ、スケッチブックを片手に自転車に跨がった。
思った通り、清々しい六月の風が頬をすり抜ける。
こんな休日は久しぶり。騒がしい教室で子供達と居るとこんな事が幸せなんだ。私ってもしかして子供嫌い? そんな事を考えていたらいつの間にか、芝生の見える土手公園に到着した。
私は水を取出し一口飲むと、冷りとしたボトルが気持ち良く思わず額に当てながら「よいしょ」と草の上に腰を下ろした。(あ〜ぁ、オヤジみたい)いきなり自爆する私。しかし心地良い。青空に丸くて白い雲が流れる。その動きを追掛けると、野球好きの父を思い出した。
小さな頃から野球をしていた私は、父の頼もしい友達だった。
父が工場から帰ってくると、必ず二人でキャッチボールをした。姉達と比べ『お前は素材が良い』そう言っては私を草野球の試合に出したり、野球観戦に連れて行った。
中学に上がった頃、私はキャッチボールをしながら父に言った。
『あたし、中学では美術部に入るから』
私は父に野球部に入れと言われるんじゃないかと思い、そんな話しを切りだした。父はキョトンとした顔をしたかと思うと吹出し声で笑った。『可笑しくて涙が出るよ』と草の上に寝転びながらも笑っていた。私も父の横に座りそして寝転んでみた。今日と同じ青空に丸い雲が二つ流れていた。
(真面目に言ってるのに……)
私はそう思いながら、父に『そんなに笑わないでよ』と言う。父は『ほら、あの雲を見てな、きっとくっつくぞ』と言った。私は何故か素直にその雲を見つめた。そして雲が重なった時に父が『ほらな、大きなオッパイみたいだ』そう言って私の胸をチラリと見た。
『いやらしいな〜もう!』
私が怒ると、父は『好きな事が一番だな』そう言って立上り『帰るぞ』と言った。
自転車を押す後ろ姿は今になって思い出すと、少し丸かったな? と思った。
微風が流れる。キャッチボールをする親子がいる。
私はスケッチブックに青空を流れる白球の様な雲を、淡い色で描いてゆく。
しかしそこまで。白球が白いオッパイ雲に変わると、睡魔が優しく微笑んだ。