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第37回1000字小説バトル Entry2

激闘の午後

 私はどういうわけかひどく不機嫌になることがある。そんな時は決まってボクシング用の手袋をはめ、上下赤のジャージを着て外に飛び出す。

 昼下がりの公園は、若い奥さんたちやその子供たちで溢れていた。そこに私が現れると、親たちの雰囲気は一瞬にして凍りついた。それは、この私自身に、圧倒的な威厳、圧倒的な貫禄の備わっている証拠であると言えよう。親たちは子供たちがうっかり私に近づいたりしないように、ひそひそとそれぞれ自分の子供の名前を呼ぶ。私は遠巻きに彼女たちを一瞥し、それから入り口から一番近い、動物をかたどった小さな乗り物の前に来た。そして全精力をこの腕に注ぎ、そいつを何発も立て続けに殴り、時の声をあげて敵たちを威嚇した。

 私は向こうにいた奥さんたちを突然憎いと感じた。それで彼女らが集っている辺りへ思いっきり駆け出し、そのうちの一人に掴みかかって地面に押し倒した。公園中に恐怖の叫び声あがって、みんな我先にと逃げ出した。私は抵抗する彼女の髪をつかんで顔を殴った。遠くで子供たちの泣き声が聞こえた。うるさい、と叫んだ。
そして這って逃げようとする彼女の両足を掴んで持ち上げて、公園の中をゆっくり歩いてみた。心の中の混沌が、急に透明になるのを感じた。
 その時、騒ぎを聞きつけた近くの会社の男性たちが4,5人むこうから走ってくるのが見えたので、私は威厳を保ちながらその場を立ち去った。

 それから、歩いて街にやってきた。街でもさすがに私の爽快な格好は人目に付くらしい。人々がじろじろと私のほうを見る。しかし彼らに対しては、鋭い目つきと口元のわずかな微笑で十分すぎるほどの効果があった。
「世の中は極めて不可解な現象で満ちている」
私はかの哲学者が老いて語った言葉を胸の中で反芻する。
「それでも私は現状打破の道筋を見出したのだ」
いつのまにか駅のすぐそばまで来ていた。そしていつも大勢の人でにぎわう、ケンタッキーフライドチキン。私はあのいまいましい白髪の作り笑顔の人形を凝視した。
「これは明らかな偽善、この私に対する冒とくである」
私は例の白スーツの偽善人形の前に立つ。そして鋭く構えて、奴を一発で叩きのめす。
飛び散るガラス、驚愕する通行人たち。慌てて外に飛び出した店員たち…………すべてが、すべてが歪んで赤っぽく見える。
男というものは、常に闘っていなければならない。そしてその対象は、必ずしも人間であるとは限らないのだ。

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