第37回1000字小説バトル Entry26
「君、モデルやってみない?」
街でいきなり男に声をかけられた。スカウトなんて初めてだった。
「君みたいな娘を探してたんだよ」
男はただただ私の魅力について熱く語ってくれた。そうだろうそうだろうと心の中でうなづきながらも、私はすっかり逆上せ上がってた。
そして、その結果がこれだ。
「照明OKでーす」
大学卒業しても就職浪人で、バイトも見つからずにフラフラしてたらお金無くなっちゃって。こんな時に声かけて来る奴がいけないんだ。
「じゃぁ今度は下着も脱でみようかー」
「ぜ、全部脱ぐんですか!? 」
聞いてない。こんな話、全然聞いてない。プロモーションビデオのモデルやってみないかなんて、ちょっと怪しいとは思っていたけど案の定だった。でも、一日の撮影で五十万とか言われちゃったらそりゃぁ心だって揺らぐし、スカートのファスナーだって下りるわよ。
照明が暑くて汗ばんできた。下着姿でスタッフたちの熱い視線に晒される。頭がクラクラする。
「全部脱いじゃおうよ。ここまで来たんだしさ。ねっ」
「は、恥かしいです……」
男たちの目が、さっさと仕事終わらせようぜ、と言っている。そんな義務も責任もない筈なのに、なんだか躊躇する私が責められてるみたいだ。ええ分かったわよ。脱げばいいんでしょ! 脱げば!
「おっ! 脱いでくれるんだねっ」
ブラのホックを外した瞬間、なんだか私が彼らよりもワンランク弱い存在になったような気がした。そして私の全てが溢れる光と視線の中、レンズの前に投げ出された。
「それじゃ、絡みいってみようかー」
マジっすか?
「ほら、リラックスして」
色っぽい声で耳元に囁くステキな男優さんは、でもパンツ一丁だ。なかなか締まった体つきはしてるけど、ちょっと毛深いかも。
「ハイ、スターッッ! 」
もう後戻りできない。お金貰っちゃったし、これでしばらく生活には困らないって安心しちゃったし、すでに乳首摘まれてるし。
「んっ……」
床にそのまま寝かされた。背中が冷たくて、頭は醒めるいっぽうだ。さすがプロの男優さんだけあって感じるツボは分かっているらしく、私は濡れるいっぽうだ。
コツン……
壁に頭をぶつけた。目を開けると頭の上に窓があった。窓の向こうには空がある。雲ひとつ無い空は、とっても澄み渡っている。その空の青さがひどく遠くに思える。もう、あの空の下には戻れないような気がして、なんだか泣きたくなってきた。