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第37回1000字小説バトル Entry28

素晴らしき国

−−読むな。読めっ!−−『カララゾマホンの兄弟』トウフガスキドスエ

 何だか知らんがモルモン教の宣教師と称する西洋兄ちゃんが、道行く私をおごそかに呼び止め、「あなたは神を信じますか。私はあなたと分かり合いたい」などと言っている。ウンコを漏らしたような表情を浮かべている私に向かって「あなたと分かり合いたい」「あなたと分かり合いたい」と繰り返す。すみません。ごめんね。僕は特にあなたと分かり合いたくはないのです。それじゃぁさようなら。と言えぬ自分が可愛くて仕方がない。それでこんな風に言ってしまう。
「神様っているんでしょうかねぇ。見たことないんですけど」
 西洋兄ちゃん、「私も見たことないのです」とウンコを漏らしたような表情を浮かべる。困った困った。西洋兄ちゃんを困らせちゃった。
「心の中にいるって感じでしょうかねえ」
 と負けじとウンコを漏らした表情を浮かべて役者並のセリフまわしで答える私は日本の恥でございましょうか。
 いいのさ。いいのさ。どうせ私は「日本」という仮面をかぶった一青年にすぎぬのだから。いっそ演じてしまえ。ああそうさ。俺は日本男児さ。はいはい。
 などと思いをめぐらしていると、「そうです! 神は心の中にいるのです!」などとウンコを出し切った表情で答えるのは、おお、愚かなる西洋兄ちゃん。神の存在を信じて疑わないとはなんたる迷妄か。神よ、あなたは罪作りなお方です。神よ、いま、私の目の前にいる哀れな子羊を救いたまえ。
 いけねぇいけねぇ。ニイチェいわく、「神は死んだ!」
 だからどうしたというのです。神は死んでも信仰は死んではいないではありませんか! 信仰は死なない! いいですかニイチェさん。百年の時を越えて説教いたします。「信」は死なないのです。やっぱり神は「生きている」のです。
 さぁ、神を信じる西洋兄ちゃんよ、私に付き従え。私はあなたを「素晴らしき国」へと導くであろう。私とともに「素晴らしき国」を築こうではないか。まずは財布の中の金をすべて出したまえ。なんだ三万円しかないのか。これじゃなにも悪さできねぇじゃねぇか。このぼんくらめ。まあいい。この金でそこの「素晴らしき国」にでも行こうじゃねぇか。乳揉み放題だぜ。

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