第38回1000字小説バトル Entry3
『大統領』
病床の大統領の元に、防護服を身に着けた秘書が現れた。
「どうした」
『良い知らせと、悪い知らせがあります』
「悪い……知らせから言え」
大統領の顔には、疱瘡が現れている。
明らかに、天然痘の末期症状だった。
『滅死病の感染者が、世界人口の半数に達しました』
「ふん……そんな事か。良い方は」
『滅死病の治療法が見つかりました』
「なんだ……と?」
弱々しく大統領は身体を起こす。
『大黒点前推定百年の遺跡から、文献の発掘に成功しました』
「大黒点前? あの暗黒時代のデータがか?」
『はい、例のプラスチック円盤の中に、解読可能なものがありました』
「なんと……」
『発掘された二万枚のうち、四枚に磁気データが残存していました。アカデミーで
も、残存の理由について研究を――』
「そっちはいい。治療法……は?」
『はっ』
秘書はディスクを再生機にかける。
ディスプレイに、ノイズ混じりの映像が表示された。
「……の、……は………へい……」
大統領と同じ疱瘡が現れた子供の映像だった。
「で……の……テンネントウ……」
「てんねんとう?」
『滅死病の当時の呼び方でしょう』
秘書は映像を早送りする。
『ここです。よく聞いていて下さい』
医師の前に並んだ子供たちの映像に、音声がかぶる。
「……テンネントウは、シュトウによりコンゼツセンゲンを……」
「根絶宣言……だと?」
『はい』
「ふ、ふふ、何の対処法も……なかったのも頷ける」
『その様な病原体が何故現代に現れたのかは不明ですが』
「どうでも……いいことだ。そのシュトウのデータ、ないのか」
秘書は大きく頷いて、ディスクを入れ替える。
『――数十年前に発掘されたデータです。無用の情報として資料室の奥で埃をかぶっ
ていましたが』
ディスプレイに、新たな映像が映る。
『まさか、滅死病の特効薬の情報だったとは、アカデミーのスタッフも驚いていまし
た』
一人の背の高い男が、ある男を訪ねている。
「へえ、これがシュトウですか」
「ああ、そんだよ! 作り方ぁ簡単だぁ」
「早速作れ! 本年度予算の予備費を全て充てても構わん!」
『既に用意してございます』
「なに!」
『アカデミーが全力を挙げて再現しました』
「おおっ!」
『どうぞ』
「うむ、これは……」
「……お酒が欲しくなりますね」
「だから『酒を盗まれる』っちゅーんじゃよ、がはっははは!」
ぽわぱっぱーぱぱぱ、ぽんぱぱぱぱんぱぽん。
『キッコーマンが、お送りしました』