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第38回1000字小説バトル Entry6

メール巷間

「手筈は判ってるな。ムショに入る事になっても、心配いらねぇ、後の面倒は見てやる。帰って来たら幹部候補だ。しっかりやんな」
 幹部候補が聞いて呆れる。5年も下っ端をやって目が出ねぇなんざ、この稼業にゃ 向かねぇのよ。足を洗えばいいもんを、鉄砲玉なんぞで命を落とすのは可哀想だが、 それも自業自得というもんよ。まぁ言われた事だけはちゃんとやるから今までいられ たが、流石に年の食いすぎだ。

「♪マサカリ担いだ金太郎」曲が流れてメールが届いた。

《兄貴、事務所の前につきやした。明かりが点いてません。どうしやしょう》

 勝治に限らず最近の若ぇ奴らはメールだけは早い。会話をそのままのスピードで打 ち込めるのが当たり前のようだ。しかしこのくらいのことで、聞いてくるというの も、臨機応変な対応が出来ないからだ。情けない。しかし事務所が留守というのはオ カシイ。俺はマサにいって、メールを送り返させた。

《鍵なんぞ壊して入れ》

《は・入りやした。電気は点けてもいいでしょうか》

《馬鹿野郎! 電気は点けるな》

《奥で物音がします。どうしやすか》

《おい、勝治。メールの着信音はどうしてる?》

《あっしのは桃太郎です。あっすんません。バイブに変更します(汗)》

 奥に人がいるなら完全にばれている。隠密行動が出来ないとなると、ここは突っ込 むしかねぇか。

《その辺に、2・3発ぶち込んで帰ってきな》

 これで奴もお陀仏だろう。

《4発ぶち込みまちたが、ピッピ・ピッピピ音がするだけで、何の反応もありませ ん》

《何の音がするって?》

《携帯のメールを打ってる音です》

 俺は唖然とした。ひょっとしたら相手も誰かに聞いてるんだろうか? バカな留守 番を置いているらしい。

《誰か出てきました。チャカを向けて「誰だ?」って言ってます》

《組の名前は出すんじゃねぇぞ》

《どうしたら、いいでしょう》

 相手も勝治と同じなら、突拍子も無いことをすれば助かるかも知れないと考えた俺 は、秘策を授けた。

《いいか、黙って裸になって、その辺にクソでもしろ》

《えっ? クソですか?》

《そうだ。相手が驚いてる間に逃げて来い》

《頑張ってるんですが、出ません(ToT;)》

 絵文字なんか使うな!

《相手は何をしてる?》

《メールを打ってます》

《それじゃ、メールを打ってる間にその野郎のカマを掘っちまえ》

《いやですよぉ、そんなの》

《生きてそこを出たきゃ、やれ!!》

《兄貴、これって癖になりそうっす(^o^)》

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