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第39回1000字小説バトル Entry13

ゴーゴー青春

 帰り道。後ろから先輩が走ってくる。
「こんちわ、山田先輩」
猛ダッシュで走ってきた山田裕也先輩は勢いを保ったまま俺に向かって殴りかかってきた。右頬にストレートパンチをもろに受けてノックアウト。青い空が遠のいていく。
 意識の奥で寝ていた俺を誰かが殴った。
「あんた誰よ!ここで何してんのよ!この野郎!」
連発パンチが俺の顔をヒットする。飛び起きると茶色の髪の女が鬼のような形相で荒れ狂っている。一体何なんだ!何故か被せられていた布団で慌ててガードした。
「ちょっと待ってください!」
「変態!人の部屋でなんで寝てるのよ!」
「誤解だ!やめてくれ!」
すると突然女は攻撃をやめて静かになった。布団のガードを外すと女は床に落ちていた俺の制服を見つめていた。
「もしかしてあなた稲葉高校の人?」
「そうですけど」
制服に向けた目を俺に向け女は驚いた表情をしている。
「あんた村井じゃん!なんであたしの家にいるの?」
「えっ、なんでここにいるのか俺もわかんない。っていうか、あなたもしかして山田さん?」
「そうだよ!おんなじクラスじゃん!」
謎が解けた。きっと先輩に運ばれてきたんだ。それで先輩と山田優子は兄妹なんだ。
 俺が推理を語ると彼女は納得の表情を見せた。
「そっか。お兄ちゃん今バイト行ってるの。帰ってくるまでここで遊ぼうよ!」
 彼女はお茶を持ってくると言って、部屋を出て行った。部屋の隅にギターが置いてある。弾いてみろという悪魔の言葉に従った。弾き方なんて知らないがとにかくそれらしいことをしてみた。
「何してんの!」
怒って彼女が戻ってきた。
「まったくもう」
彼女は深いため息をついて俺からギターを取り上げた。
「村井はホントしょうがない子ねぇ。弾きたいの?」
子供に接するような彼女の口調に答えるように、目を子供のように輝かせて大きく頷いた。
彼女は丁寧にギターの弾き方を教えてくれた。
 一時間位で彼女は疲れ果てて寝てしまった。
 それから何時間彼女の部屋でギターを弾きつづけただろう。
「おはよう。まだギター弾いてたの?もう朝じゃん。あれ、まさかここに一晩中いたの?」
「ギターうまくなったから聴いてくれよ!」
『森のくまさん』をロック風にアレンジして演奏した。自分の出す音に酔いそうになる。何度も意識の狭間を漂う。なんとか無事演奏終了。
「あんた、すごいよ。いつの間にこんな」
彼女はポッカリと口を開けア然としている。
「俺ギターで世界を目指す!」

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