第39回1000字小説バトル Entry24
「まず、生ビール1杯で臨界に達するほど、お酒に弱い人がいるとします」
「なんかアンタみたい」
「アタシのことはどうでもいいのよ。そしてその人が、自分で焼く式のお好み焼き屋に入って、お好み焼きを1枚注文します」
「そりゃお好み焼屋だからね」
「まあ聞きなさいよ。で、それをつまみにビールを1杯飲むわけ」
「アンタならそれで臨界だわね」
「アタシのことはどうでもいいんだってば。まあ、十分スタンバイOKなのはマリコの予想どおりだけどさ」
「やっぱりアンタのことじゃないの」
「もうっ話の腰を折らないでよっ! それで、胃の内容物がリバースされてくるでしょ」
「うんうん」
「それを鉄板の上に展開するわけ」
「展開って……ええ?」
「つまり、鉄板で」
「ゲロを焼くわけ?」
「もう少し上品な表現をしてちょうだいよ」
「状況がすでに上品の彼方なんだけど」
「とにかく、リバースして気分はよくなってるし、鉄板の上に2枚目はできてるし、またそれで飲めるでしょ」
「食べるわけ? そのブツを?」
「味も見かけも、お好み焼きそのまんまよ。最初に注文したものを食べるとき、よく噛まないようにするのがコツね」
「……」
「それでビールを1杯飲めば、また気分が悪くなってリバースする、と。で、リバースすれば気分がよくなるから、新しいお好み焼をつまみにもう1杯飲める、と」
「…………」
「そんな感じで繰り返していれば、料理を追加注文しなくても、1枚のお好み焼だけで、ずっと酔っ払っていられるってわけ」
「………………」
「まず普通の食べ物――ウランを摂取して臨界に達する。後は、その食べ物が変化した胃内容物――プルトニウムを再利用しながら、最少の食料――燃料消費で臨界を維持する。プルサーマルってそういうことなのよ」
「アンタ、電力会社に就職決まったんでしょ? もっと気分のいい例え話してよ」
「マリコが『プルサーマルって何?』って聞くから、わかりやすく説明したんじゃない。要は汚物の有効利用だもの、この話の通りだわ」
「……プルサーマル計画って」
「世間の反感買って当たり前かもね。ゲロだし」
「アンタがそれ言っちゃダメじゃん!」
そう言いながら万梨子は、バイト先の飲み屋で毎日始末する残飯の山や、ほとんど手付かずの料理の皿を片付けながら「これを別の席の酔っ払いに出したらどうだろう。どうせ気付かないし、吐くか残すかなんだろうし」と何度も考えたことを、苦い気持ちで思い出していた。