第39回1000字小説バトル Entry29
入り口で渡されるカードに、それぞれ一ヶ月の所要量と服用法が書いてあり、自分の欲しいサプリメントと期間にチェックして後はレジに直行すればいい。
店員が袋にビタミンB6+コリン+イチョウ葉のラベルを貼って、その下に手早く「元気アップ!H」と書いて渡してくれる。
商店街も変わったなあ、と店員に思わず声をかけそうになる。まあ、こんな若い子に言っても不思議な顔をされるだけだろうな。店内の時計を見ると9時前だった。今日は意外に早く終えられたものの、最近仕事での無理が続いてどうも調子が悪い。ついでにハーブも加えようと思い、奥のコーナーにあるパネルを見て、推奨されている組み合わせを適当に選ぶ。袋の下にジンセン+トケイソウのラベルが貼られ、手書きの文字が「快眠で元気アップ!H」に変わる。
外に出ると、広い往来は適度な照明と立ち並ぶ店の明かりで十分に明るかったが、道の真ん中を歩くのはいまだに何だか落ち着かないもので、車が来ないかとつい後ろを振り向いてしまいたくなる。
商店街で配布される紙袋はもちろん再生紙、その上に貼られた「快眠で元気アップ!H」の文字を見たのだろう、八百屋が威勢のいい声でニンニクを勧めてくる。そのまま通り過ぎようとするが、生産者の名を聞いてやっぱり買っておくことにした。八百屋は産地については詳しく知らないといい、代わりに11桁のコードを教えてくれたので、帰ったら照合してみることにした。ニンニクを袋に入れてもらい、袋には「モリモリ」と書き加えられる。
最後に、今晩のメイン、とびきり活きのいい卵を物色する。卵屋でニワトリの卵を三つ買って袋に「活きがいい奴」と書いてもらう。
後は家に帰って冷蔵庫と相談すればいいだろう。ニンニクが意中のものなら今夜はちょっとしたご馳走になるかもしれない。
ひっそり静まり返った部屋に明かりもつけずに入ると、買い物袋をレンジに入れてスイッチを押した。明日は少し遅めの出社でもいいかな、そう考えるとちょっと浮かれた気分になってビールを二本出し、それを前にいそいそとスーツと靴下を脱ぐ。チ−ン、と小気味いい音を聞いて、今度はビールを放ってそっちに急ぐ。レンジの蓋を開け、買い物袋を覗くとすやすや眠っていた。胸肉がたくましく、暴れられたら手を焼きそうだ。ハーブを加えといて正解だった。
さて、トマトで煮るか、照り焼きか。冷蔵庫に聞いてみよう。