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第4回チャンピオンofチャンピオン小説バトル Entry3

空の青さえかすむ朝


「あなたには優しさというものが分かっていないのよ」
「そうかな?」
「そうよ」
 確かに優しさとは何かと聞かれれば僕は並べ挙げられる言葉は持ち合わせていないように思う。でもそれを知らないわけじゃない。たとえ僕には分かっていなくても、ちゃんと目の前に見ているはずだから。

 梅雨明けを思わせる素敵な日曜の朝だった。空は退屈なくらい青くて、あと一時間くらいすれば暑くてエアコンを入れるだろうけど、いまはまだ涼しい風が白いカーテンを揺らしていた。二十五階のマンションに住む彼女はいつもこの気圧の高い空気を吸っているのだろうか?

「隠し事は良くないと思ったんだ」
 パンに目玉焼き。あとサラダと牛乳。ブラウン管の中でしか滅多にお目にかかれない絶滅危機種の朝食は食べるのがもったいないくらいの代物だった。特に目玉焼きの黄身の半熟具合が。
「そういう秘密は言わないのが優しさだと思うわ」
「別に浮気したわけじゃないし、隠すようなことでもないんじゃない?」
 そういえばフレンチトーストも最近お目にかかっていない。スクリーンの絶滅危機種な朝食はもしかして既に絶滅してしまったのだろうか? あとで聞いてみよう。フレンチトーストって知ってる? 主に小さな子供がお父さんと作ったりするやつなんだけど。
「浮気だってばれないようにするのが優しさだって言う人もいるじゃない」
「ばれなきゃ浮気しても許してくれるの?」
「許さない」
 即答。その割には先週したプロポーズの答えはまだ貰っていない。なにげにサラダのドレッシングがノンオイルのやつだ。美味しいし健康にもいい。たぶん僕たちは大人のカップルで、駆け落ちしちゃう若い二人みたいに急ぐのはちょっと恥ずかしくなる年頃なのだ。
「二人だけの秘密ってことで、駄目かな? 誰も聞いてないし」
「仕方ないわね。ただ……」
「ただ?」
「毎年この日に忘れずにわたしに状況報告すること」
「了解しました」

 もうすぐ空気は熱せられ風は熱くなるだろう。きっと僕たちはエアコンを動かし、カウチに寝そべり流行り物を紹介するテレビ番組を見ながら「これ行ってみない?」とか話す。そして二人だとアクティブにならずにいられない二人は午後から実際にそのスポットに行ってみたりして、夕方にはスーパーで買い物をして帰り、そしてたぶん今日の夕食はコンソメ仕立てのロールキャベツだ。彼女の得意料理だから。そんな幸せをかみしめる、空の青さえかすむ朝。


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