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第8回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry2

勤勉なネズミと、怠け者のネズミ


 ある家の台所の裏に、勤勉なネズミと怠け者のネズミが住んでいた。
 ネズミたちは床板の節穴から台所に入り、チーズを少しづつ盗んで暮らしていた。

 ある日、怠け者のネズミは言った。
「チーズは、壁一つ向こうにあるのに、わざわざ床下まで遠回りをするのは面倒な事だ。壁を破れば簡単に取りに行けるに違いない」
「楽ばかりしようと考えちゃいけないよ」
 勤勉なネズミは諭す。
「床下まで行くのに、どんな手間がある? ほんの少し走れば良い、何の苦でもないじゃないか」
「わたしはそれが苦になるんだ」
 怠け者のネズミは、そう答えて、壁を囓り始めた。

 怠け者のネズミは怠け者だったので、はかどらない日や、何もやらない日もあったが、しまいには壁に穴を空けた。
「やったぞ!」
 怠け者のネズミは、穴を通りチーズをお腹いっぱい囓って戻って来られた。
「ふうん、穴が出来たのか」
 勤勉なネズミも穴を通って、チーズを囓った。今までより、ずっと早く行って帰って来られるようになった。

 チーズの減りに気づいた家の主は、猫を飼い始めた。
 怠け者のネズミは、こう言った。
「チーズを取りに行く度に、猫と追いかけっこをするのは面倒だし恐ろしい事だ、壁に待避用の穴も作って、すぐに逃げ込めるようにしよう」
「呆れたものだ、楽ばかりしようと思って出来るものではないよ。一生懸命働くからこそ、チーズは尊いんだ」
 勤勉なネズミは諭す。
「十日に一度猫に追いかけられたからと言って、それがどうしたというんだ? 怠けずに逃げれば、捕まるなんてよくよくの事だ」
「わたしはそれが苦になるんだ」
 怠け者のネズミは、そう答えて、壁に待避用の穴を作り始めた。

 怠け者のネズミは怠け者だったので、丸二日何もしない日もあったし、猫が怖くて震えていた日もあったが、しまいにはネズミ一匹がすっかり隠れられるだけの穴を作り上げた。
「やれやれ、これで楽に逃げられる」
 一眠りした後、怠け者のネズミはチーズを取りに出た。
 怠け者のネズミが大きなチーズを一つくわえたところで。
「にゃあああっ!」
 気づいた猫が、怠け者のネズミを追いかけた。しかし、怠け者のネズミは待避所へ滑り込み、間一髪猫の爪から逃れた。
 猫は「まあいいや」という顔をして、口の周りを舐めてから丸くなった。

 怠け者のネズミは壁の裏に戻ると、持ち帰ったチーズを食べながら周りを見わたした。
 けれど、勤勉なネズミの姿はどこにもなかった。


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