第8回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry7
「ヨシオはどうした」
「学校の宿題で西南戦争のことを調べるんだとか言って、明治維新に行きましたよ。夕飯までには帰ってくるように言ったんですけどねえ」
便利な世の中になったもんだ。先月購入した洗濯機は、時間操作式だそうで、洗剤を使う代わりに衣類固有の時間を操作して新品に戻してしまう仕組みだという。その時間操作機能のおまけとして、洗濯ドラムに小さくなって乗り込めば、簡易時間旅行を楽しむことが出来るんだそうだ。
俺は元来、電化製品の説明書は受け付けないからわからんのだが、妻と息子の話によると、時間操作式家電は、レンジにケータイ、冷蔵庫と実用範囲を広げているらしい。特に時間差テレビ(薄型)は「ザ・ベストテン」も当時のままで観れるというから、驚いた。
「しかし、こう時間操作式家電が氾濫したんじゃあ、歴史ロマンもたまらんな。国家の起源も戦争も実際に見に行けちゃうってんだから。歴史の重厚さが著しく損なわれちまって、テレビ番組にもならんよ。困ったもんだ」
「でも、お蔭で進化論は完全に証明されたし、ビッグバンや三億円の秘密も解き明かされたじゃない。そうそう、レノンの事件も……」
「そうやって何でも解き明かすから、男のロマンが無くなっちまうってんだよ。それに、学生や観光客に踏み荒らされて、万一歴史が変えられたりしたら、それこそえらい事だ」
「大丈夫よ、一般人が行けるのは、国家時間局が開設したバーチャルの方だけなんだから、リアルはとっくに封印されてるわよ。あなた何も知らないのねえ。ちょっとは勉強しておかないと、ヨシオにバカにされるわよ」
「そうか……」
「ヒャアー、父ちゃん、助けてくれぇ」
洗濯場のほうから古典的な叫び声を上げて、ヨシオが飛び込んできた。
「どうした、なんだ、だ、誰だ、お前は」
ヨシオを追いかけるように官軍姿の人物が日本刀を構えて居間に侵入してきた。ヨシオが後ろに隠れたので、俺は官軍兵士とまともに対峙した。
「どけ、庇いだてすると容赦はせんぞ」
叫ぶと同時に、官軍は日本刀を振り下ろし、俺は袈裟斬りにされ、凄まじい血しぶきを上げつつ、床に倒れだ。ほぼ同時に、台所に備え付けてあったM−16を素早く構えた妻が弾丸十数発を連射し、けたたましい銃声と供に官軍も床に沈んだ。
「父ちゃん。死んじゃ嫌だあ」
ヨシオが涙声で叫ぶ。
「大丈夫よ。忘れたの、こっちの父さんはバーチャルよ」
えっ、俺もバーチャルかよ。