第14回詩人バトル Entry5
さくらの降るとき
その木々のもとを潜るとき
はじまりの匂いがする
水の昇ってゆく匂いがする
時計の螺子を一杯に巻いて
それを右手に握ったまま
川沿いの土手に座っている
新しい緑を靴底に踏んで
季節を肺に満たしている
何故また暖かくなるのだろう
何故また芽が開くのだろう
どれだけ繰り返したとしても
同じ春は戻らないのに
五年目の鞄を空っぽにして
それを左手に提げたまま
笑う親子連れを眺めている
一日先の予測も付かずに
訳なく季節を喜んでいる
どれだけ繰り返したとしても
同じように浮き足立つもの
さくらの降るとき
その木々のもとを潜るとき
また一年 歳をとったと思う
そしてはじまりの匂いがする
水の昇ってゆく匂いが
訳のない期待がくしゃみを誘って
誰かの倖せを祝いたいと思う