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鉄筋コンクリートのビルの窓から、一瞬眩い光が放たれると、次の瞬間には炎が吹き出し、あたりに轟音が響き渡った。 砕け散る窓ガラス、まるで割り箸のようにぼっきり折れるビル、跳ね上がる業火の赤、かすかに聞こえた断末魔の叫び、ときおり落下していく人間のパーツ、それらがこのあたりの空間を支配していた。 ビルの上半分が地面に墜落し、衝撃が私の足元にも伝わってきた。周辺にいた人々もようやく状況が飲みこめたのか、四方八方逃げ回る。 無駄だ。 逃げ惑う人間の一人が突然、消えた。正確に言うと、地面から飛び出した爆風がその人の体を木っ端微塵に粉砕したのだ。 地雷である。 しかし、その事実に気づいた者は私しかいなかった、他の人々はまだ続いているビルの爆発や、わけのわからない真言を唱える老人の声や、泣きじゃくる子供の声など諸々の雑音に気をとられ、次から次へと地雷を踏みつけていった。 すると、私のすぐ目の前に、いつのまにか3歳くらいの小さな男の子がいた。 きっと、この子は地雷の間にあるわずかな隙間を運良く通りここまで抜けてきたのだろう、スタッフに、あれほど地雷の設置の時には隙間をつくるなと言っておいたのに…まったく。 「お姉さん…」 不安げな声で私に話し掛けてきたその子に、私は自分のショルダーバッグから取り出した楕円形の黒い物体を見せ、その先についている栓を抜くと無理やりその子の手に握らせてから、私は走った。 「え…まって…」 その子が呟くように言ったが、私は耳を貸さず、すぐ近くの路地裏に隠れた。 任務の対象範囲から、生存者を出してはいけない。 これが、私達の組織の掟。 地雷とはまた違った爆発音がした、そのあと煙がもうもうと、私のいる路地裏まで届いてきた、私は路地裏から少し顔を出す。 さっきの子は、もうそこにはいなかった。 地雷の爆発音は、まだ人々の生命の終焉を告げるサイレンとして絶え間なく鳴り響く、私は携帯電話でスタッフの一人に地雷をまた新しく設置するように指示して、混乱のさなかにいる人々の叫び声を背にして、静かにその場を去った。 今回の任務における総死者は5392人。目標達成。 つい30分前まで真っ白だった紙面の上に、33行におよぶ文章をつづった女は、静かにノートを閉じた。 これを、次の担当者に渡さなくてはならない。 ノートの表紙には、黒く、冷たい明朝体で、「集団虐殺状況・結果報告書」と書かれていた。 通称――――― ジェノサイド日誌。 |