第13回中高生1000字小説バトル Entry8
「どこでもいいの?」
彼女は僕にそう言った。僕は「どこへでも」と言い、彼女の横に座る。彼女は二本目の煙草を吸ったままそこに横になると、僕に向かって笑ってこう言った。
「あそこ。あそこがいい。」
彼女は左手で遠くの空に光る一つの星を指差すと、僕の顔を見てもう一度笑った。僕は「わかった」と言い、頷く。きっと連れて行くよ。絶対に・・・。
列車は僕を乗せたまま、空の旅をしている。列車の窓からは色とりどりの星が輝き、遠くの方では何千羽もの白鳥が天の川を渡っている。僕はその白鳥達を眺めると、僕の横の席に置かれた黒い革のボストンバッグを見た。そして小さな声で(周りにいる人に気づかれないように)ボストンバッグの中にいる彼女に向かって呟く。もうすぐだよ。もうすぐで着くよ。
列車が赤い屋根のついた小さな駅の前で止まり、僕はボストンバッグを持って駅に降りる。駅には人はいなく、僕は改札口へとゆっくりと歩いて行く。列車は僕が降りた事を確かめると、きらきらと輝く粉を撒き散らしながら発車する。僕は駅の改札口を通るとそのまま駅を後にし、駅の目の前にある大きな噴水の前で立ち止まる。そして大きく息を吸い、ボストンバッグを地面に置くとゆっくりとバッグのチャックを開けた。
「はい。着いたよ。君の望んだ場所に。」
ボストンバッグの中には、真っ白な肌をした彼女の頭がある。僕はその頭を両手で持ち、ボストンバッグの中から出した。彼女は頭から下は無く、目は綺麗に閉じ、唇はうっすらと微笑んでいる。僕はその頭をすぐそばにあったベンチの上に置き、僕も彼女の頭の横に座る。
僕は地球で「望み屋」と言う職業をしていた。「望み屋」とは人々の願いを聞き、それを叶えてあげる仕事のことだ。その仕事の中で僕は時々、人を殺す仕事もしていた。殺すといっても只の人殺しではない。自殺志願者である人達を殺し、そしてその人達が望んだ場所に連れていってあげるのだ。そして今、僕の隣にいる彼女が5人目の依頼者だった。
「ここは綺麗な場所だね。」
僕はそう言い、彼女の頭の上へ視線を落とす。そして、横目で駅の改札口を睨んだ。
駅の改札口からは数人の黒いコートを身に纏った男達が、僕を見張っている。その男達の腰の辺りには拳銃が用意され、その拳銃の銃口は真っ直ぐに僕を見つめている。
警察だ。僕はそう感じると、ゆっくりと立ち上がり微笑む彼女の頭に向かってこう言った。
「幸運を。」