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第14回中高生1000字小説バトル Entry13

無題(仮)


12月29日 午後8時3分
明は現在では珍しい旧式のワープロの画面を見つめがら、一人唸っていた。
「あと、2日と4時間か……」
QBOOKS“学生1000字バトル”の締切りが刻一刻と近づいている。
深谷章というPNで詩人としてバトルに参加していた明が、初めて学生バトルに投稿したのは第11回の時。しかし、学生バトルに参加したのはそれっきり。どうやら、その後に出した一般1000字バトルの感想の「これは電脳日記だ」という一言が明をスランプへと追いこんだらしい。
そして、今もスランプ中。
さっきから、全くキーボードには触れていないのに、目はお手上げクイズをしている所ジョージにくぎ付けだ。まるで愛の告白でもしそうな勢いである。
「マジカル頭脳パワー復活したのかぁ………」
などと、全く関係ない独り言を言う。
答えを出さなくてはいけないのに、いい案が浮かばない時の明の癖だ。どんな人間でも逃避することがあると思うが、明は人一倍逃げやすい。今もマジカルシャウトをテレビの中の回答者と本気で張り合っている。
『では、似たもの三択です。』
「モリさんって良い声してるよなぁ……」
と、明は呟いた。モリさんの声が今の明を癒しているのだろうか。
『息子 孫 ひ孫 お嫁にいけないのは?』
「息子!!」
明が間髪入れずに叫んだ。回答者の誰よりも速かった。
明の顔に笑みが戻った。
単純な奴だ。だが、人間なんてそんなもんだ。単純なのだ。そして、単純なことは幸せなことでもあるのだ。
「さぁてと。」
明はリモコンを手にすると、電源のボタンを押した。
テレビがカチッと音をたてて、画面から色をなくす。
やっと視線をテレビからずらした明は、私のほうを向くとこう言った。
「姉ちゃん、さっきから何うってるの?」
「文芸部の提出課題だよ。」
「へぇ、終わったら読ませてよね。姉ちゃんがパソ使ってるせいで、俺がこんなワープロ使ってるんだからな。」
「わかってるわよ。」
明は私の返事を聞くとワープロの電源を切った。
「あれ?書かないの?」
「あぁ、今回はやめるよ。無理して書くもんでもないしね。」
そう言うと、明は部屋から出て行った。
私はかまわずキーボードをうち続けた。
題名は何にしよう。
「深谷章ダメダメ日記」だろうか。もしくは「エセ物書き失敗へのプロセス」?
それとも…………


時計を見ると10時を過ぎていた。
「あと、2日と2時間か………」
私はパソコンの画面を見つめながら呟き、一人唸り始めた。

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