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第14回中高生1000字小説バトル Entry5

暗い

 暗い。起きて頭に浮かんだ言葉は正にそれであった。

立ち上がり、両手を一杯に開いてみたが触れるものはなく、一歩踏み出してみる勇気も無い。

一体どうしてこんな事になってしまったのだろう。俺は昨日の晩を回想してみることにした。

 師走の風が冷たく俺の頬を刺す。

四軒目のバーで飲んだウォッカが効いたのか、やけにハイになっている。

俺は近くにあったゴミ箱を豪快に蹴り飛ばすと、これまた豪快な高笑いを響かせた。

側に居た犬が逃げていくのを見ると、俺は余計に愉快だった。

頭の中では「スター・ウォーズ」のテーマが流れ、俺に冒険を促す。

「らいとせいばぁー!」

俺は棒切れを振り回すと公園を走り回った……。

 俺の記憶はそこまでである。

「くそっ」

俺は座り込むと何とか思い出そうと頭を振ってみた。

「あいたっ!」

二日酔いが俺を襲った。やはり四軒目のバーで飲んだウォッカが効いたらしい。

 とにかくこのまま居るわけには行かない。

俺は目の前の空間をまさぐり、そこに地面があることを確認すると、一歩ずつ進んでいった。

 三十歩ほど進んだだろうか。ふいに手が硬いものに触れた。壁である。

鉄やプラスチックに似た、ひんやりとした感触である。解った所でどうにもならない。

俺はまた三十歩後ずさり、今度は逆方向の地面をまさぐりはじめた。

 三十歩ほど進んだだろうか。ふいに手が硬い物に触れた。壁である。

鉄やプラスチックに似た、ひんやりとした感触である。解った所でどうにもならない。

どうやらここも駄目らしい。俺は三十歩後ずさり、今度は横方向の地面をまさぐりはじめた……。

 もう六回この記述をするのはやめておこう。早く言えば縦横斜め、全ての方向に壁があったという事である。

俺は完全に閉じ込められてしまった。とすると、酸素には限りがある!

今までのあやふやな恐怖は本格的な恐怖へ変わった。生還の望みが完全に断ち切られてしまったのだ!

 一体どうしてこんな事態になってしまったのだろう。公園で何が起こったのだろう。

誰かに恨まれて閉じ込められたのだろうか。犬の尻尾を踏んだことがあった。

公然と悪口を言った奴も居た。そうそう、かなりしごいた部下もいたっけ……。

 考えれば考えるほど事態は悪化していく。とにかく自分は助からないのだ。

俺は一番直感的な言葉を口にした。

「らいとせいばぁー!」

本能的に腕が振り上げられた。 

 …薄いダンボールの板が破れ、師走の冷たい風が吹き込んだ。

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