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第19回中高生1000字小説バトル Entry7


少女の長い髪が風に大きく舞い、少年はそれを少し捕まえる。
微かに引っ張られる感触に振り向き、少女は初めて少年に気付いた。
視線がぶつかったまま、また風が吹く。
木がざわざわと鳴いて、どこか遠いような感覚の中
名前も知らないお互いの存在だけが鮮明だった。

不意に少年が口を開いた。

死ぬの?

「………」

ざわり。
また木々が鳴いた。

「どうして死ぬの?」
「………」

少女は何も答えず、俯いた。

「……………」
「……………」

沈黙したまま、しばらくの時間が過ぎて。
俯きっぱなしの少女をじっと見つめていた少年がそれを破った。

「ねえ。どうせ死ぬなら、こっちに来ない?」
「……………?」

少年の言葉が何を意味しているのか、少女にはよく解らなかった。
でも。
木々のざわめき、白い太陽の光。
どこか遠くで誰かを呼ぶ声。
それらを全部押しのけて、存在を主張する…
…自分の髪を掴んで自分を見ている少年の姿。

少女は静かに頷いた。

にこり、と少年が笑う。
彼は彼女の髪を離し、白い手をとった。
繋がれた手を見て、彼には少女が小さく微笑んだように見えた。

この少年なら、自分の欲しかったものを見せてくれるかもしれない。
自分でも何が欲しいのかよく解らなかったが、強くそう感じた。

風が吹いた。

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