第21回中高生1000字小説バトル Entry10
授業中 突然起こされた。
教科書が少し湿っている。
ヨダレとか垂らしてないよな?俺。
それ以外 何も変わらない授業風景。
突然起こされることも初めてじゃないから「あぁ またか」程度ですむし。
今日の目覚ましは国語教師 辻井。
チョークとか直ぐ折っちゃう握力馬鹿。
黒板と会話してるようにしか見えないし。
でも、話とか聞かない奴がいたら容赦なく怒鳴る。
得に俺とか。
そんな大きな声で言わなくても聞こえるよ。
こう言ってやりたくなる。
・・・。
オイオイ ちょっと待てよ。
今は理科の時間じゃなかったっけか。
だってここ、理科室。
バッカでェ 間違えたのかよ。
間違えるかよ 普通。
そしたら俺を呼んでつかつか歩き出した。
あ、用事だったの。俺に用事なの?
授業休めるよ ラッキー!!って感じだった。
理科室が見えなくなったあたりで国語教師辻井は立ち止まった。
気が付いたら俺、何処か解らない病院の集中治療室の前にいた。
親父はうつむいて、妹は十分泣き腫らした目でまだ泣いていた。
俺?
俺は立ってた。
ソファがあったけど立ってた。
少し喉が渇いてたと思う。腹も減ってたと思う。
そんなこと少しも気にかからなかった。
「岩瀬ェ、お前のお袋さん、倒れたんだ」
立ち止まった国語教師辻井は俺に言った。
いつもの癖で語尾はのびたりしてたけど
ぶつぶつ声じゃなくてハッキリ聞こえた。
俺、きっと凄い顔してたと思う。
何も口利けなかったし。
こいつの言ってること冗談だとも思わなかったし、嘘だとも思わなかった。
どこに行けば かあちゃんに会える?
そうとしか思わなかった。
んで、今に至るわけ。
俺、本能的に察知しちゃったのかな?
やばいくらい思った。
かあちゃんとは多分、もう会えない って。
それから何分、あるいわ何時間たったのかは分からないけど
時間とか空腹とか眠気とか気にならないくらいの
時間がたっていたんだと思う。
かあちゃんは死んでしまった。
病名は長ったらしくて覚えていない。
妹は毎日泣いていた。親父も俺たちに隠れてトイレで泣いていた。
でも、死んだ母ちゃんとの対面、葬式中、49日たっても俺は泣かなかった。
ふと、国語教師辻井に会った。
少し話をして
「お袋さんは多分大丈夫だ。だから もういい」
と言われた。
うつむいたら 涙がこぼれてた。
乗せられた車の中で国語教師辻井は言っていた。
「ちょっとの間 泣くのを我慢しろ。お袋さんが大丈夫になるまで、
なるまででいいから 泣くのは我慢しろ」
俺は車の中で泣いていた。
我慢した涙の味は多分一生忘れないだろう。
母ちゃんのことも。
国語教師辻井のことも。