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第21回中高生1000字小説バトル Entry3

もう一人の存在

「でさ、俺らの将来どうなるの?」
「そんなの、適当に勉強して普通に卒業して、普通に就職して、OLにでもなってお終いじゃない?」
「俺はフリーターかな?」
「そんなもんかなぁ…やっぱり。」
「お前はどうしたいの?」
「俺は…」
俺と、男友達、女友達、3人で話してみる、将来。
高3にもなって将来を考えるのは遅いのだろうか。
夢も現実味を帯びてくる。
小さい子のように、「パイロットになりたい!」など言うことは出来ないのだ。
「分かんない。」
「何それ。早く決めないと!」
皆が笑う。What’s?
そんな適当に決めるものなのか?
全く分からない。

「お前は何したいんだよ」
僕の中の誰かが話しかける。
「僕は…君になりたい」
「俺に?何故?」
「無理に男らしく『俺』って言う必要もない。物事を考える必要もない。」
「楽をしたいのかよ。」
「いけないのかい?」
「俺は良いけど…やっとお前を頂ける。さんざん拒んできたお前を。」
「良いよ。交渉成立さ。」
不適に微笑む誰か。素直に応じる僕。

「あぁ…」
身体が熱い。身体が空になる…。
暗い暗い闇の中に光が見える。
「いらっしゃい。」
「君はもう一人の僕?」
「あぁ。けど、今から立場が逆転さ。」
「うん…名前だけでも教えてよ。」
「俺の名前は…」
大きな光が僕を包む。

「ねぇ?どうしたの?急に倒れて…」
「ん…ちょっと頭が痛くって。」
「吃驚したぜ。」
「顔色が何だか悪いわよ?」
「保健室へ行ったほうが良いよ。」
「うん。分かった。行ってくるよ。」
「気をつけてね。」

「あぁ!ボールが向こうにいっちゃった!取ってくるわ!」
足にボールが当たる。
大きく広がる黒い影。その形はまるで、悪魔のように…。
「ボール、取ってください。」
振り返ったその顔は薄気味悪い笑顔。
背筋がゾッとする。
「はい、どうぞ。」
何処から発せられる声だろう。
まるで闇の底から聞こえる悲鳴のような声。
「ありがとうございます…」

一歩一歩、踏み出す。
保健室ではなく、ある川へ向かって。
川は静かに流れる。
平和である事を告げるような静寂。
何か起こりそうな静寂。

俺は血の涙を流す。
手には、深紅の薔薇がある。
瞳から零れる雫も、深紅。
太陽に照らされた夕方の川も、深紅。
世界が全て…深紅に染まる。
だが、俺の身体は染まらない。

何故かって?君にだけ教えてあげようか。
声高らかに言ってやろう。
君の為に…まぁ今言っても、君は闇の奥深く。
意味のない事かもしれないがね。
それはね、僕の名前は「死」だから…。

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