第23回中高生1000字小説バトル Entry2
少し暑い。
オレは喫茶店に入った。
コーヒーを頼んだ。
少し渋かった。
どうでもよかった。
オレは高校の授業が面白くなかったので、2時間目からサボって、この繁華街へ出てきたのだった。
まあいいや。どうでも。
喫茶店でダラダラと1時間ほど過ごした後、オレはふらっと映画館に入った。別に見る物もなかったのだが、なぜだか引き寄せられるように入ってしまった。適当に映画を選び、チケットを買った。
今日が平日なのでか、客はオレだけだった。
「そんなに人気無かったのか」
オレはど真ん中の座席に陣取った。
「どうでもいいけどな」
映画が始まった。単純な物語だった。
あーあ。金払って損したぜ。
その時だった。
オレはふと気がついた。
「これ、オレじゃねぇか!」
そう。目の前のスクリーンに映っていたのは、オレだった。
しかも、そのオレは、今、オレの驚きさえも映していた。
「何だよ、こりゃぁ!」
その時、誰もいなかったはずのオレの後ろから声がした。
「当たり前ですよ、これはあなたの映画なんですから」
その男は笑っていた。辺りが薄暗いので、顔はよく見えない。歳も分からない。
男は続けた。
「あなたの映画館で、あなたの映画を観る。ごく自然なことだと思いますけどねぇ。ククク……」
「はぁ? バカなこと言ってんじゃねぇよ。オレのオレのって、こんな、こんなバカな話があるか!」
オレは、だんだんと腹が立ってきた。映画なんてもう観ていなかった。
「だいたい、お前誰なんだよ!」
男は、にやにや笑いながら答えた。
「私はあなた。あなたは私。分かり切ったことです」
「意味がわかんねーんだよ!」
オレが席を立とうとしたその時、足下に猫がいるのに気付いた。
「どっから潜り込んできたんだ……」
その猫はやけになれなれしく体をすり寄せてきた。
「潜り込んで来たも何も、それはあなたです。始めからいましたよ」
「もういいよ!どうでも」
オレは反論する気もなく席を立とうとした。
「あれ……!」
立てなかった。
「なぜ立とうとするのです?」
「出てくからだよ!」
「出てく? 何を?」
オレはものすごくムカついていた。
「ここをだよ! 当たり前だろ! お前、頭わりーんじゃねーの!?」
その男は少し驚いた様子で、言った。
「ここはあなた。自分を出るなんて事、できるわけがありません」
「そんな……」
オレは全身の力が抜けるように感じた。
目の前が真っ暗になった。
「おい、こら、起きろ!」
オレは、その大声で目を覚ました。
「あ……」
目の前にいたのは、クラス担任の先生だった。
「『あ』じゃないだろ! 授業サボってお昼寝か!?」
先生はめちゃくちゃ怒っていた。
「まったく。なにか言ってみろ、おい」
「……先生」
「あ?」
オレは息を一つついて、言った。
「先生、オレって何ですか?」