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第8回中高生3000字小説バトル Entry4

世界はどこかでつながってる

 修一と、ケンカした。
 なんか久し振り。っていうか、最近人と馴れ合ってるだけで、意見が食い違ったりとか、口調を荒げたりとかなかったからな。だから、余計に疲れるんだよ。
 待ち合わせに二十分遅れたくらいであそこまで言うか? 普通。
あー、ムカツクな!
 だいたい修一と俺は、小学校から高校までずっと一緒で家も近くて、お互いのことよく知ってるはずなんだ。確かに俺はルーズで時間に遅れるなんて日常茶飯事だけど、そんなこと修一は知ってる。親友だったら、友達だったら、わかってるんだから、軽く愚痴言う程度でいいだろうに、あそこまで言うことないだろ。本当。
 おかげで今日俺は、修一と映画の予定だったけど、出会った途端あんなこと言われたものだから、俺はふてくされて背を向けた。後ろから修一の呼ぶ声が聞こえたけれど、無視してやった。
 修一は頑固すぎる。
 確かに今日の二十分は遅れすぎたかもしれないけど、あいつ頭いいんだからそのくらい予定内に入れとくべきだろ。それに今回だけじゃなく、何かにつけて遅い、遅いって。二分や三分でもそう皮肉ってくる時があるから、そういう日は俺としてはめっちゃディープだ。人間は機械じゃないんだから。そのくらい遅れたっていいだろう。このせちがらい世の中で、時間に囚われず俺みたく奔放に生きるのは大切だぜ? きっと修一は一分一秒を重んじる評判の悪い上司になるんだ。きっとそうだ。
 俺は違う。
 流行の最先端を行って、ラフで素敵で危ない青春の日々を満喫するんだ。将来だって有名なシンガーとかになって、全世界を股にかけるんだ。修一とかそこらへんの頭の堅い連中には到底なし得ない偉業を成し遂げてみせる。それが俺の夢なんだ。事細かにしつこく追及してくる修一は悪役さ。語彙と倫理しかない奴だ。
 そうさ。あんな奴…。


 俺は自室のベッドに倒れこんだ。
 午前中のあどけない日差しが邪魔で、カーテンを引いた。その隙間から零れる銀色の陽光は、月光にも似てる。
 熱いな。
 初夏だからじゃない。暗いシェードの中に沈む俺の頬に、一閃、傷跡のように光る一筋の陽光。じりじりと熱いんじゃなくて。そう…ずっと奥の、心が熱いのだ。
(そうだよなあ。ひとりだけで正当化してたって意味がない…)
 俺はダークな雰囲気に身を委ね、午前中のうちから、深い眠りに落ちた。


 目覚めたら夜になっていた。
 明日は学校で否応無しに修一と対面することになる。そうしたら、何て言ったらいいんだろう。それ以前に、どんな眼をしていたらいいんだろう。
(俺が悪いんだよな。遅れたのは俺。修一はそれを注意しただけだから…)
 今更ながらに俺は身の内に罪悪感が込み上げてくるのを感じた。
 パソコンを立ち上げた。
 そしてインターネットに接続。苦しいこと考えたくなかった。最近お気に入りのあのサイトに行ってない。そろそろ何かアップしてあるかもしれない。それなら、きっと楽しくなれる。そう思って俺はカチリと左クリック。
 …だが、別に何も更新されていなかった。
 俺は何か嫌になって、次から次へとネットサーフィンした。いつもは保証付きで笑えるサイトも、全然笑えなかった。むしろ、褪める。
 俺は無表情のまま浅く深く、クリックとドラックを繰り返した。
 そのうちに、妙なサイトを見つけた。
「何だここ…『クリスタル』?」
 というサイト名らしかった。背景に綺麗なクリスタルのCGがある。
 だが、サイトのコンテンツは『CHAT.』のみ。それもレタリングも何も施されていない、味気ない青い文字。崇は無心でそのフォントをクリックしてみた。
(ハンドルネーム、何にしよう。えーと…) 

クライ>はじめまして
SEPHI>あ、こちらこそ。管理人のSEPHIです。セフィって読みます
クライ>管理人さん? 偶然ですね
SEPHI>寂しいサイトでしょ? つい最近開いたばかりで。丁度今チャットが使えるかとかひとりで施行してたんだよ
クライ>ここはどういうコンテンツにするつもりなんですか?
SEPHI>実は考えてないんだ。友達がいてね。そいつとこれから考えようかなって
クライ>友達ですか…
SEPHI>…クライさん。何か悩んでるね。友達のことで
クライ>そんなことないですよ
SEPHI>よかったら話してくれないかな。チャットだけど、よほど運が良くないとこんなサイト来れないから、誰も。クライさん?
クライ>いきなりプライベートに干渉するほど、野暮な人なんですか
SEPHI>ごめんね。ただ、僕ならなんとかできるかもしれないよ
クライ>無責任なこと言わないでください。何もしらないのに
SEPHI>あなたには、謝る意志があるんでしょう? 相手もきっと同じですよ。人と人は同じではないから、もめごとを繰り返します。でも同じでないから、互いの相違点を見つめあって解りあえるはずです。思いきって話かけてみてください
クライ>でも、そう簡単には・・・
SEPHI>じゃあ僕がアドバイスを。いいですか?
クライ>…どうぞ
SEPHI>友と別れて、心が寂しいときは、『ブルークリスタル』を思い出してください。その蒼い水晶の輝きは、闇に置けば、夜の闇の憂いのように冷たく、精緻でありながら繊細で壊れやすい。暗闇のブルークリスタルは、今のあなた。けれどその蒼い水晶を一度昼の陽の下に置けば、磨き上げられた水晶の内部で光は美しく幾重にも屈折し、蒼い透き通った光が溢れます。その煌きは満月の月光よりも流麗で、夏の青空よりも華麗。ひとつ並ぶものがあるとすれば、それは人の心の中の希望。それは明日のあなたであると私は思います。誰にも負けずに輝けると信じていますよ
クライ・退出
SEPHI>がんばれよ。クライ


 何であんな『SEPHI』とかいうネットの奴の言葉に励まされるんだろう。
 そう考えると、やっぱり修一に声をかけずらい。修一も頑固で、全く今日は俺の方を見ようともしない。そんなこんなで、もう放課後になってしまった。
 でも…こんな時、何とかしてこそ友達ってもんだよ。たぶん。
「修一!」
 人気のない岐路まで来て、俺は勇気を出した。
「昨日は、その…悪かった。今後気をつけるから…」
「ありがとう。どう仲直りしようかと思ってたんだよ」
 おおっ。やっぱりSEPHIの言う通りだった。やっぱり修一はいい奴だ。SEPHIがそれを証明してくれた。
「ところでさ」
「な、なんだ?」
「…ブルークリスタル、輝いてるか? クライ…」
 俺は唖然とした。
 修一がそのことを知っている理由は、たったひとつ。
「ま、まさか修一、お前が…SEPHI!?」


 やっぱり世界は、どこかでつながってる。

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