第20回1000字小説バトル結果
川島ケイさん作『鏡の私』がチャンピオンの座を獲得しました。
川島ケイさん、おめでとうございます。
●鏡の私(川島ケイ)
- 『鏡の私』を推薦します。今回は全体に低調で、ひとりよがりな作品が目につきました。他人に読ませるものだとわかってないんじゃないか、というようなものもありました。
そんな中で一際光っていたのがこの作品だったと思います。たんに好みだけかもしれませんけど。
『あたらしい朝』とどちらにするか悩みましたが、グランドチャンピオンにはもうひとつ高い所に行ってほしいので、こちらにします。とにかく一番気に入りました。
- おもしろかったです。やんわりした感じがとても。
- 今回、この作品を推薦します。
まず、話の内容が1000文字にちょうどいい感じになっている。内容は小さいながら、充分な表現力を出しており、うすっぺらく感じさせない。何というか、シンプルさの良いところが出ていると思います。
- ふたつの女心かな。がならないところが心地よかったです。
- 『体言止めの男』『鏡の私』が目に留まりました。
両方ともアイデアが光っていましたが、気付きそうで気付かないという点で『鏡の私』を推します。……しかしこれを映像化したら、ドリフ系コントになりそうですねぇ。
●体言止めの男(しょーじ)
- 女の人が出てきて会話を読んで、「あっ」と分かってしまったが、おもしろかった。楽しめましたよ。
ただ、ちょっと他の作品で気になったが、5W1Hぐらいしっかりしてくれよ。といいたくなったのがいくつかあった。そこまで読者に深読みさせるか、と。説明しすぎるのもなんだけれど。読んでて疲れる。私は読者よ。
- 参りました。面白いです。
- グラチャンの一之江さんの作品は流石に良かったんですが、今回はこれで決まりでしょう。笑わせていただきました。
- 小気味良い言葉と、小気味よいストーリー展開が楽しめました。
●あたらしい朝(一之江)
- ありふれたテーマだが、最後の1行がとても上手い。読む人に新世紀への希望を抱かせる。
- これが一番ちゃんとした物語になっていると思った。
最後にこの作品があることで、なんだか救われた気分になった。
- 新しい朝が来た希望の朝だ。
「あたし」の確信はどこからやってくるのだろうか。
彼とは結婚の予定もない、だって彼は失業中、年賀状も彼からしか来ない、意地悪な母、職人気質で挙動不審な父、故障がちの自転車、シンナー漬けだった高校時代、富士山五合目お土産屋での情けないバイト時給700円。ちっともいいことなんかないじゃないか。それでもあたしは言い切る。「あたしたちの、時代だよ」その言葉の響きは、毎朝6時半、老人たちの細い生命の炎を奮い立たせるあのメロディーに似ている。
●一週間(BEAN)
- 少ない字数の中で広い世界を表現できていると思います。素っ気なさといったものも感じますが、シンプルで自然な語り口が心地よさを感じさせてくれると思います。
- BEANさんの『一週間』を推します。まず、構造的な面白さを感じました。これで掴みはOK。で内容ですが、彼に働きかけてくるのは、非日常的な存在ばかり、それがさらに現実ばなれした状況へと化していくにもかかわらず、主人公の返事は、シニカルとも見える現実的なものです。日曜日になると、現実ではあるけれどきわめて仮想的な存在からメッセージが届く。主人公は現実的なリアクションを予想しつつ、ここではじめて、自分を取り巻く非現実について語るのです。さて、だから何なのだと言われると実はまだ、よく分からないのです。分からないものに投票するなよって気持ちが自分の中にもあるのですが、しかしこれは、不遜な表現を許していただければ、一種の投機ですね、何かありそうな気がする。分からないのは私の読解力が足りないためかもしれないし、作品が未整理なのかもしれないし、ひょっとすると単に作者にはぐらかされているだけかもしれませんが、何かあるとして、それをこういう形で表現しようとした試みを評価したく思います。次点はウエダカホリさんの『きつねの嫁入り』です。私の好みとしては少し過剰気味な表現が、しかし丁寧な綴り方のためか浮き上がることなく自然に伝わってくる所が上手と思います。最後は少し波瀾の雰囲気? まあ普通の評価をすればこちらが本命かもしれませんが、私はたまにバクチ打ちになってみたりしたがる年頃なのです。同じ理由によって、一之江さんにも入れてあげない。もうもう重ね重ね不遜ですみません。
●きつねの嫁入り(ウエダカホリ)
- 今回はあまり迷う必要がなかった。楽でよい反面、寂しくもある。一之江さんの『あたらしい朝』とどちらかなと思ったが、やはりウエダさんを推したい。どちらも、神経の行き届いた文章で、読ませると思う。ウエダさんの作品は題材が非日常な分、凡庸な作家が書くと限りなくマンガチックになりそうなところ、嫌みにならずにまとめたと思う。そこを評価した。
●不況脱出(吉原 明)
- 辛い!辛口だ。
完全にあり得ないと言えないところが面白い。
実現したらそれはそれで面白いと思うのは
やっぱり今の社会体系がつまんないからなのかな。
ただ文字数はかきましょうね
●死後の楽しみ(川辻晶美)
- ホラーは嫌いなのですが、的確なオチが良かったと思います。
●落葉坂(さとう啓介)
- デフォルトさんの『実力主義』、しょーじさんの『体言止めの男』など、発想、組み立て、内容等実にユニークでおもしろいと感心させられます。さすが常連さんだけの貫禄も感じます。余裕が文章にでているのかな。今回の作品を読み通して、1000字にみたない作品の多いことこの上なさ、がっくりときて読む気にもならない。おちが最初から見えてるもの、神とか宇宙とかゲーム感覚の作品が独りよがってる中に、ああ良かった、ここに潜んでいたのですね!と声をかけたくなるようなミガピカの作品が2作品ありました。本来のオーソドックスなスタイル、小説とはうんぬんかんぬん、この伊勢湊さんの『焚き火』とさとう啓介さんの『落葉坂』がまさにそれです。二者の作風には前から惹かれるものがあります。風景描写、深い余韻、構成、ほのぼのとした読後感などとてもいい感じです。そして、迷いに迷ったあげく『落葉坂』を推薦させていただきたい。

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