第14回1000字小説バトル結果
第14回作品受け付け───4月22日〜5月25日
作品発表──────── 6月1日〜
人気投票受付け───── 6月1日〜6月25日
結果発表──────── 6月30日
第14回1000字バトルチャンピオン
川辻晶美さん作『Welcome Home』に決定です。
川辻晶美さん、おめでとうございます!!
●Welcome Home(川辻晶美)
- 今回の作品の中で最も感動的でした。個人的に、こういう感動的な作品がもっと増えたらなぁと思います。最後の台詞、とても胸に響きましたありがとうございます。
- 今回の作品は、もっと推敲して欲しい作品が多かった様に感じました。常連の人達の、手馴れた遊び心のある作品を読んでしまうと、余計にそう感じてしまいます。今回は、悲しくてジーンとさせてくれた『Welcome Home』川辻晶美さんと、重いテーマなのにさらっと読ませてくれた「パゲ山考」俊さんの作品が心に残りました。技術的には、もっと上手いと思える人もいましたが、今回も悩んだ末に、悲しみがストレートではありますが、川辻さんの作品にします。
- 『Welcome Home』は、じんときました。ジュゴンの語りから「わたし」の語りになったところで少々違和感がありましたが、最後の一文に泣かされてしまった為、この作品を推します。
次点は『もっくん未熟者』。かわいかった。面白かった。これを読んだ翌朝、ベランダに小蜘蛛が糸を渡しているのを発見し、「あらもっくんだ」と思ってしまったくらい、印象に残りました。雰囲気の素敵な作品。
他、迷った作品は、『殿様』。これはもう、笑わせていただきました。「殿様ー好きだー」と叫んだ、清市が好き。
『ちんぽくん』。実は、このての話は苦手です。けれど、構成が上手かったし切ないのが良かったです。読ませてもらえました。
●変身(杉原久郎)
- 結局、最後にたどり着くという意味に捉えられました。深く、考え過ぎゆえにこのような文章が生まれてくるような気がしました。でも、このような文章が書けない私にとっては私が思ってることが素直に書かれててとても親近感が生まれました。素直さが効いてました!!
- 今回は全体的に良い作品が少なかったように思います。隙がなく、小説的に優れていたと思える作品はいくつかありましたが、今回はそれらの中からは選ばず、(特に傑出した作品がなかったゆえ)1000字作品として非常に希でありながら、実は真に正しいスタイルかもしれない「変身」を選びたいと思います。なぜ変身するのか理由はないですが、しかし、タイトルは「変身」であり、作者はしっかり変身を描いています。それ以外はある意味虚飾であって不要、という潔さが良いですね。
●遅れ咲き(aoye)
- 少年は自分を守りたいのでしょうか。期待して裏切られるくらいなら、初めから期待しないほうが痛手は少ないと考えているようです。そして7回目の誕生日に、その思いはむしろ強まってしまった。彼がこの先、友人・恋人との信頼関係を築き得るのか、自分を守ろうとするあまり近しい人を傷つけてしまわないか、少し心配です。その問題は少年期の終りとともに解決されるのでしょうけれども。
- aoyeさんの『遅れ咲き』を推します。初めての友達が桜の木というのは随分悲しいですが、寂しい少年のそれ以前の孤独感までもうかがわせます。進行は少々無理に詰め込んだ雰囲気はありますが、整えられた文章で上手にまとめられていると思います。
●春風邪(うめぼし)
- 1000字という限られた字数の中で、最も情景描写が巧みでした。主人公の行動に心情も現れていて、良かったと思います。
- 文章全体に好感がもてたし、夏子という名前の使い方がうまいなーと思います。決め手は夏子です。こういうちょっとした工夫でも文章が印象的になったりするんだなーと感心です。
●角のジミーがいなくなった(Momo)
- 1.単なる話の断片でなく、完結した物語であること
2.単なる空想の凝固物ではなく、何がしかのテーマがあること
3.マナーとして、規程を遵守していること
この3点を基準に選びました。
まず3.については、残念ながら守られていない作品が目につきました。段落の冒頭を一段下げにしていない、誤字脱字がある、などです。とくに前者については、これを無視することで字数制限が緩和されるので、完全なルール違反だと思います。
1.については、今回エントリーされた作品の多くが該当していたように思えます。
2.については、ストーリーが先行してテーマが感じられない、テーマが前面に押し出されていてストーリー性に欠ける、テーマがあからさまで嫌味である、などの作品が多いように感じました。
そんななかで、Momo氏の作品は、今回の白眉であったように思います。読んでいて素直に情景が浮かび、後味も爽やかで、ストーリー性は申し分ありません。また、ジミーが政治の話を好み、その多くが受け売りだという一節に、世の評論家への揶揄のようなものも感じられ、面白かったです。そして全体に、作者の憧れる生き方がさらりと提示されていて、鮮やかでした。
以上の点から、この作品を推します。
●雪は白く、空は青い。(池野諭)
- 情景を浮かべやすく、新鮮な空気がそこに存在していた。若干、指示代名詞が多いのが気になった。
●堕天使と雪(Default)
- 綺麗にまとまっていていいと思いました。1000字という限られた字数を有効利用しているのが素敵です。
●魔法のぼうし(越冬こあら)
- ナンバー順に所感を書いてみたい。どれも、何かおしなべて小さくまとめようとしているようで、好ましくなかった。そのなかで、自分の個性に正直に書いているもの、あまり細かいことを考えずに、のびのびと書いているものを、挙げてみる。
Entry 8●『海に願いを』有香さん作
感覚はいいが、いかんせん「ロマンチック」すぎると思った。いい個性があるんだから、その使い方次第だと思った。どうどう、どうどうどう。それを自分に聞くと、よいのかもしれない。
Entry 16●『鮫』ぱんちさん作
最後の一行がなかったら投票していたかもしれなかった。今さら落とす必要もあるまいと思った。ばかばかしさに一切謎解きをしない、その姿勢に好感を持てたのに、なんだかなり切れていない部分があって、もったいないと思った。
Entry 20●『魔法のぼうし』越冬こあらさん作
なんだろう。どこに何を感じたのか。これは切なさだった。切なさを書いた小説だった。そうではなかろうか。いや、そうと信じたい。最後の一行を読むまで、適度にまとめられた小説かと思っていた。しかし、工場長の決意は、意表をついた。切ない決意だと思った。
Entry 22●『おかまのシゲルちゃん』鳳めぐみさん作
ありがちな過ちを犯していないだけ、優れていた。ナルシスティック、あるいは排他的になりがちな作品(あまりにも多い)の中、邪魔な言葉が多いものの、しっかり自分を押さえて書いている。よく書けている。「?」のあとのスペースの扱い、などの細かい知識など、とりあえず気にする必要もなかろう。
ということで、この作品を選んだのだが、けして飛び抜けてよいと思ったわけでも、なかった。
●おかまのシゲルちゃん(鳳めぐみ)
- 目を惹かれたのは『いっつ そう くーる』『破壊する男』『おかまのシゲルちゃん』『Welcome Home』『角のジミーがいなくなった』。その中で『おかまのシゲルちゃん』を推します。タイトルは奇をてらいすぎの感はありますが、内容は「あ、なんかいいな」という印象がありました。自分のツボにはまった様です。
●ED(鮭二)
- テーマやストーリーよりも、全体の叙情的な雰囲気に惹かれます。なつかしいというか安心する文体。その文体とストーリーの組み合わせの妙が面白さを演出しているとは思うのですが、印象としては純愛物語のような感じを受けました。三人称で淡々と、外からの描写で語っているからだと思います。あるいは唯一の具体的な心内語、「感情を無理遣り押さえ付けると、どうして体がこんなに熱くなるんだろう」が、そこだけ浮き上がって印象に残るからかもしれません。
●ちんぽくん(一之江)
- 1000字は原稿用紙にして何枚くらいですか? 3枚か4枚でしょうか。38作品合計で120〜130枚。その中でまあまあ面白いのが3つか4つ。毎回、だいたい同じです。全体の1割くらい。私も投稿作家の端くれ、他の人がどんなのを書いているのか興味がありますから、全部読みます。いちおう、さらっと。でも、正直言って楽な作業じゃないです。そりゃあ面白い作品をめっけた時の喜びはありますけど、ほとんど砂金すくいです。何とか松茸狩りくらいにしたいものですね。もちろん、自分が面白いのを書けばいいんですけど。松茸狩りって、前もって適当な場所に松茸を埋め込んでおくという話を聞いたことがあります。全然見つからないんじゃお客さんも面白くないし、すぐに見つかっても興醒めってんで、その埋め方に熟練の技がいるらしい。あるいは先導役のおじさんがそれとなく埋めてある場所にお客さんを引っ張っていく技。今回のバトルで言うところの『ちんぽくん』です。砂金すくいのお客じゃ駄目だと言ってるんです。松茸狩りにしたいという意欲です。そんな呑気なことしてないで、まずはあたしのを読んで読んで読んで、という御訴えです。砂金すくいの私から見れば、あざとい、とも思えてしまううのですが、松茸狩りのお客さんにとっては『ちんぽくん』という目印がぜひとも必要なわけです。熟練したおばさんの技です。松茸狩りのお客さんにとって、松茸の味よりも、まずはそれを見付けたという感動が大事なのです。そして、その感動の深さは松茸の大きさに比例します。つまり、大きな松茸とは『ちんぽくん』のことなのです。

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