第11回1000字小説バトル結果
第11回作品受け付け───12月13日〜1月15日迄(終了)
作品発表──────── 1月16日〜
人気投票受付け───── 1月16日〜2月5日迄
結果発表──────── 2月6日
第11回1000字バトルチャンピオン
三月さん作『熊』に決定です。
三月さん、おめでとうございます!!
●熊(三月)
- 熊殺しをこれで終わりにしたかったにもかかわらず、仔熊が出てきたためにもう1頭殺さないといけないという主人公のジレンマが、多くの読者に共感を呼ぶのではないでしょうか。冬の情景の一部をうまく1000字で、8ミリビデオの様に切り取った作品だと思います。
その他、気になった作品
『ハンディキャップ』うめぼしさん作
『熊』とどっちを推薦しようか、最後まで悩んだ作品です。日常にありがちな光景ながら、非常に共感が持てる作品です。ただ、日常的であるがために、『熊』と比べるとインパクトの点では不利かも。
『死神のテニスボール』俊さん作
賢い主人公にやりこめられてる、マヌケな死神。普通と逆の立場になってるのが笑えますね。単純に面白い。ただ惜しむらくは、あまりにも冒頭に「死神」と出てきたのがちょっと変じゃないかと。普通、死神に遭っても、それと認識するまでにはしばらく時間がかかるでしょうから、少し時間稼ぎ(というか行数稼ぎ)があるともっと良かった。
『ハザリ』紺詠志さん作
申し訳ないのですが、途中で先が読めてしまいました。アイスクリームの棒が登場した時点で「ハズレ+アタリ」の造語であることはすぐ分かりますし、意味もおそらく「どっちつかず」だろう、で冒頭の主人公の奇行と合わせると、オチがこうなることは読めてしまいます。オチが読めるがゆえに、途中の説明が長すぎると感じました。むしろ、最後の主人公の一幕に行数を注いだ方が良かったのでは? もっとも本来なら、このようなナンセンス路線で攻める場合は、予想を裏切る展開にした方が読者に訴える力は大きいと思うのですが。
『白と黒』Defaultさん作
書き慣れている方でしょうか? 文章としてはまとまっていると思います。ところが、ラストで神を殺す理由がいま一つ分かりませんでした。尊い命である人間同士に戦争をさせた神を、文字どおり「人でなし」と憎んだのでしょうか?(それならもう少し、それをうかがわせる記述が欲しいところです) あるいは深読みして「黒人と白人のことを言ってるのかな?」とも思いましたが、それだとこういう展開にはならないでしょうし。結局のところ、RPGの世界の延長でしかない様な気がして、これではゲーム好きの一部の若者にしか受けないのではと思いました。
『赤い雨の少女』村田秀人さん作
着眼点は面白いだけに、惜しいと思いました。先生と生徒という設定と、赤い雨につながりがないなと感じました。例えば少女を事故死ではなく、自殺にすると良かったかもしれません。そうすれば、先生が生徒の気持ちを掴んでいながら結局力になれなかった、という構図が明確になって面白かったと思うのですが。
- この作品はたった1000字の小説なのに、一つの冒険を私たちに見せてくれます。五十の老人、勝治は、もう熊を捕る人も少なくなったというのに、頑固にも山に入ります。勝治はその性格から、妻と子供に家を出て行かれます。吹雪の音しか聞こえない、静けさの中で熊を見つけます。銃の轟音が、静かな山に木霊します。──この静と動。折りたたむように、まったく見事に描写されています。勝治個人の哀しみを、熊を捕る冒険に織り込んだ素晴らしい小説です。
- 最初の一行から興味そそられました。1人の猟師の感情に引きつけられ、思わず自分の父親のことを思い出してしまい(普通のサラリーマンでしたが)じんとしました。題名は”熊”でしたが、熊の親子と自分の去っていった家族とリンクしているところがまたじんとしました。悲しいような、寂しい作品ですが私はこういう作品が好きです。(24歳OLより)
- 筆力が群を抜いています。アイデア勝負の作品が多いなか、こういった作品は目立ちます。本当に力がないと、こういう作品は書けません。素晴らしかったです。
- 正当派ですね。小話し的オチにこだわることなく、あくまでも小説として追及した姿勢が立派だと思います。
●ハザリ(紺詠志)
- 過去の1000文字小説のグランプリに受賞していた紺詠志さんの作品を呼み、彼独特の世界にツボをつかれてしまいました。紺ワールドに何だか惹かれてしまう私です。ぜひまた次の作品が読みたいです。
- 改めて全作品の題名をみた時に、一番記憶に残っていた。ってゆうか良かった。
- ヘンに寒い世界が、実にうまく書かれているなあと思いました。バイトの兄ちゃんの受け応えとか、それに対応していく私とか。淡々とした文章で、それがまたいっそう寒さをにじみ出していて、総合的に一番おもしろかったと思います。
あと、次点は、『それは詭弁というものだ。』『ぶれーき』『洗脳』推薦作品:『河原の二重唱』でした。どれを推薦しようか、大変迷ってしまうほど、どれもおもしろかったです。
- 楽しく読ませて頂きました。同じ様な事、小さい頃僕も思った事があります。
●変身(サトコフ)
- 全感想では総合評価を、投票では好みでということでサトコフさんの『変身』が一番好みでした。爆笑。
- もう一直線に楽しく読ませて頂きました。悲しいくらいに面白いと思いました。
他に印象に残った作品についてひとことづつ書かせて頂きます。
『ハザリ』紺詠志さん作
ハズレとアタリの中間でハザリ、アタリとハズレの中間でアツレ、ベンチとアイスの中間でベニス。ベンチ、バイト、アイス、ハズレ、アタリ、ハザリというカタカナ語の配置がとても心地良く、楽しく読ませて頂きました。しかし、言葉の配置が言葉の配置に終始してしまっていた感じで、もうひとつ何かが足りないと思いました。
『ぶれーき』羽那沖権八さん作
ブレーキに関する理論とその飛躍の仕方はとても面白いと思いましたが、ラストがちょっと違う感じがしてしまいました。
『河原の二重唱』一之江さん作
この方の安定した描写とストーリーは、安心して読めて、楽しませて頂きました。しかし、今回はちょっと淡白になりすぎてしまったような気がしました。後半にもう一つくらい味付けが欲しかったです。
『ケモノ』リツコさん作
不可思議な(アナクマ)はキャラクターとしては、とても魅力的だと思いました。もう少し物語を膨らますなり、展開するなりして欲しかったです。
●19,2000(穂積行人)
- 今回は暗い作品が多かったが、そんな中、この作品はさわやかで後味が最も良かった。突き抜けた明るさがいいと思う。キャラクターが魅力的だった。
- 『ハザリ』も捨て難いんですけれど、あちらへの投票数が多そうなので、こっち! 雰囲気的な良さが最大の美点だと思います。
●河原の二重唱(一之江)
- まず、題名にひかれて開いたのがきっかけなんですが、自分の想像していたこのような題名によくある「定番の話」というものを、いい方向に裏切られました.読んだ後、少し暖かい感じがして読んだものの中では一番いいと感じました.
- 登場人物ふたりの軽やかになろうとする気持ちがうまく表現されていると思います。軽やかな場を描くほどに、内面の苦しみが浮かび上がります。一之江さんは本当にこういうのを描くのがうまいです。「シンパシイ、と冴子は思った」、「ぱしゃっと、魚が、跳ねた」の句点、もとい読点の打ち方が絶妙でした。その一呼吸のなかに心情が描かれています。
●洗脳(越冬こあら)
- 総評を含むので長文にて失礼。疑似ショートショートも多かった。これはおおむね、伏線などのテクニカルな部分なので、市販のデキのいいショートショートをていねいに読めば、かんたんに研究することができる。唐突なオチを、意外性のあるオチだとかんちがいしないでほしい。そのなかにあって、越冬こあらさんの『洗脳』は、シカケが言葉のパズルではあるが、文章から構成からオチの見せかたから、申しぶんないデキだった。オチのわかりにくさも、読んで考えて驚く、というショートショートの楽しさを堪能させてくれた。サトコフさんの『変身』とで迷ったのだが、『洗脳』とくらべて劣るというわけではない。ただ、作品の性質、脱力感によって、インパクトの面でいくぶん損をしただけだ。これもすばらしかったと思う。次いで『河原の二重唱』。これは読者の理解とは、遠いところにある作品かもしれない。しかし、小説のテクニカルなうまさと言葉えらびのセンスによって、この幽幻な作品世界に読者を酔わせる。先述の観念的(妄想的)私小説群が至るべき先は、このような作品ではないだろうか。
- 投票の前に読み返して見ましたが、今回は『洗脳』越冬こあらさんと、『河原の二重唱』一之江さんの2点が気になりました。一之江さんの作品は今回も雰囲気があって、読んでいて思わず上手いと言ってしまう様ないい作品だと思いました。しかし前回優勝した越冬こあらさんの作品も捨てがたい。いつもの思いもかけないアイデアが今回も光っていました。こういう作品って当たり外れが多いと思うんですが、今回はアタリですよ。という訳で、悩んだ末、洗脳に1票。
●上着と鈴(鮭二)
- 一読したときははっきりとはわからなかったのですが、徐々に結末の語り手の視線の無気味さが妙に引っ掛かるようになりました。彼は女の指示で動いているはずなのに、あまりに物語に積極的にかかわろうとしています。女を動かしているのは自分であるような語りっぷりです。実は彼が女を犯しているのではないか、というように読めました。気味が悪い小説です。あまりの気味の悪さに他の作品が色褪せてしまいました。
- 今回、勝手ながら自分なりの順位などつけてしまいました。以下の通りです。
優勝 『上着と鈴』鮭二さん
2位 『奥様は魔女J型』ヒモロギさん
3位 『変身』サトコフさん
4位 『河原の二重唱』一之江さん
5位 『夢の記憶』紅 樹さん
6位 『聖母』秋丸さん
7位 『Holiday』川辻晶美さん作
8位 『羽田君の本当』川島ケイさん作
9位 『ぶれーき』羽那沖権八さん
10位『ヒミツ Momoさん作
感想は3位までです。申し訳ありませんが、ご了承ください。
『上着と鈴』鮭二さん』
女王様がいかに権力を集めていったか、書かれなくとも想像はつく。てゆーか想像させられてしまう。1000字で小説の形式を保とうとする時、象徴的な場面だけ見せるのは方法として確実と思うがそれゆえ技術力がそのまま出てしまう。前後、裏、見えない部分と、どう融け合わせていくか。この作者がこのレベルで書いてくると太刀打ち出来る人は少ないのでは無いだろうか。ストーリー云々よりは、ただそれに圧倒される感じ。導入部は、冷静に読み返すとえらく滑稽っす。
『奥様は魔女J型』ヒモロギさん
恐るべし魔女軍団。その厚い装甲と圧倒的破壊力の前には3号戦車の50ミリも玩具同然なのだった(?)。ましてや小市民的男性など、決して関わり合ってはいけない世界に違いない。コミカルな文章で一気に読まされてしまった。
『変身』サトコフさん
すばらしい暴走ぶりが光る作品。突っ走ったきり帰ってこないのが心地よい。ポットくんは、本当は何か言いたかったのかもしれない。それはきっと、明日になれば分かるんだろう。と僕は思った。
●わな(百内亜津治)
- 強烈な衝撃がかえって心地よく感じられる作品だった。
●前回までのあらすじ(ぶおまる)
- 純粋におもしろワードにこだわっているのに共感しました。もちろん、基本的にいい加減である点が良く、それは、戦略的ということもあるのでしょうが、単語への妥協のなさに伴う無意識のいい加減さであるようにも思われます。「ノミニケーション」、「大忙しの大賑わい」等が特に好きです。最終的に他人事というスタンスが貴重だと思います。
●それは詭弁というものだ。(吾心)
- 全体を通して、死を扱った作品が目に付きました。つまり、素材として陳腐化しているということ。安易な使用は避けた方が賢明です。目を惹かれたのは、『それは詭弁というものだ。』『若者の就職難におけるジレンマ』の二点。『それは詭弁というものだ。』は、リズミカルでまとまりが感じられました。「」内の改行は、ショートショートでしか許されない変化球ではありますが。
●ぶれーき(羽那沖権八)
- コメディとして成立していると思った。ただ最後に至るまでが多少冗長。押しつけ気味のところがある。それでもまぁ、最後の逆転がすべてを物語る。一瞬こっちがきょとんとした。そこがいい。押しつけなら押しつけで押し切ってやる、という作者の斜に構えた心が見えて、なおよし。個人的には『19,2000』もよいと思った。おそらく普通に判断したら嫌われることが多そうだが、そういうのはあまり気にしないで、この若々しさだとか、フレッシュな気持ちを前面に押し出せば、もっといいものができると思う。そこから個性を作って欲しい。・・・感想じゃないなぁ、これは。
●或る夜の体験(岡田聡次郎)
●昇天(Yamac)
- 『熊』この緻密さ、油断の無さはどうだろう。うまい。『ハザリ』2000年上半期私の流行語大賞決定。ハザリをめぐる世界がおもしろい。『河原の二重唱』書かなくても伝えられる上手さ。老婆は何十年か後の自分と見るのは深読みしすぎ? 今回一票を投じる作品はこれ。『昇天』話の構成がしっかりしてる。ちゃんと読ませる。一緒に遊べる。上手さ面白さ全てにおいて吉。
●後悔(逢澤透明)
- 全体的にレベルの高い作品が多く、どの作品を推すのか最後まで迷いましたが、最終的に残ったのは、「洗脳」と「後悔」の2作品でした。どちらも甲乙つけがたかったのですが、結末の美しさという点で、「後悔」の方にしました。以下、面白かった作品について簡単に感想を書きます。
『恋愛事始め』:ほのぼのとしてていいですね。
『ピグモン』:すとんと落ちが決まっていて、上手いです。
『I wana be your dog』:現代社会システムは人を孤独なニヒリストに変えてしまいます。
『熊』:文章も構成も上手いですが、少々書ききれていないもどかしさを感じます。1000字では字数がたりませんでしたね。
『いい男』:村上春樹調の文体で読みやすいです。主人公である「僕」の、傲慢さと卑屈さが表裏なす形で表されています。
『自殺願望の男』:吉本ばななっぽいというか、少女マンガ的な感じがします。悪くないです。
『RUN』:文章は荒削りだし特にひねりのないストーリーですが、タイトル通り勢いがあっていいと思います。
『後悔』:なんとも突発的、破裂的でシュールリアリスティックな作品ですが、糾弾者だと思っていた美樹ちゃんが実は艶めかしい救済者だったり、最後に憧憬するように過去を回顧する場面が美しくて僕は好きです。
『オオワライタケ』:ストーリーがきちんと計算されていて、良くできていると思います。笑えます。
『奥様は魔女J型』:くすっとした笑いを誘うような、コミカルな作品です。面白いです。
『洗脳』:シニカルなテーマとのほほんとした独特のリズムがうまくマッチしていて楽しく読めます。日常生活の書き方が町田康っぽいです。
『切符がない』:使い古された展開ですが、過去に生きる主人公の有様がまるで今の自分を見ているようでちょっと痛いです。
『ケモノ』:主人公と(アナクマ)のやりとりが楽しいです。主人公の、「やれやれ」という気分がよく伝わってきます。
●切符がない(ファゼーロ)
- 内容はありきたりなものだと思うが、読んでしまう。文章に力がある。本物の才能を感じる。

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